祝 響け!ユーフォニアム3期放送

響け!ユーフォニアムの久美子3年生編が本日より放送されますね。

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本当に、本当にめでたい。感無量です。京都アニメーションはもうTVシリーズのアニメを制作するまで立て直せないのではないかと心配していた頃の自分に、そんなことはないと聞かせてやりたいです。

という訳で好きな響け!ユーフォニアムのシーンを発表するやつをやります。アニメから観る人もいると思うので、範囲は2年生編までに絞ります。

 

・関西大会ダメ金の後に夏紀が優子の介抱してるやつ

「誓いのフィナーレ」で台詞もなくサラッと1コマ挟まれてたシーンですね。原作では、表彰式の後に部長の吉川優子が泣いていたことを秀一が偶然目撃したことが述べられるのみで、この時副部長の中川夏紀と一緒に居るというのはアニオリです。

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実は自分が原作を読んだ時に「表彰式にはこの2人で出ていたんだから、優子が部員には隠していた弱みを夏紀だけが見ている可能性は極めて高い、いや絶対そうだろ!!!!」と昂ぶっていたんですが、まさか劇場版でオタクの妄想が本当に映像化されるとは思わず、映画館で叫びそうになりました。本当に福利厚生が手厚いコンテンツ。この後部長として気丈に振る舞い、意気消沈する部員に対して来年を見据えて発破をかける所まで含めとても良いシーンです。

ちなみに「アンサンブルコンテスト」でなぜかこの場面を隠し撮りされた写真が掲載されています。なんで?

 

・オーディションで手を抜いた奏を久美子が説得するやつ

原作の「波乱の第二楽章 前編」と劇場版の「誓いのフィナーレ」の両方にこのシーンはありますね。劇場版の方が雨の中ずぶ濡れで坂ダッシュを決めながら思いの丈をぶつけあうエモーショナルな仕上がりにはなってるんですが、個人的には原作の方が好みです。

夏紀と奏の会話が拗れるのを眺めながら、混乱しながらも久美子はあすかならどうするかということに思いを馳せます。そして繰り出されるのが、

「自分から憎まれ役を買って、そのくせ相手を傷つけてることに苦しんで。利己的なふりをするのはやめようよ」

まず「お前の虚飾はお見通しだ」とハッキリ宣言して間合いを詰める。この意地の悪い物言いはまさしくあすかの話術です。ですがそれだけでなく、

「ここは、奏ちゃんのいた中学校じゃないんだよ。いま奏ちゃんがいるのは、北宇治なの」

と「お前に必要なものを提供する用意がこちらにはあるぞ」ということを認識させる。実際に一年前の久美子は、夏紀の実力主義を重んじて後輩を認める態度に救われていますからね。そして、

「奏ちゃんは、頑張ってるよ」

シンプルに一番欲しがっている言葉で締めるコンボ。最後の台詞が一番大事なんですがそれ単体ではダメで、久美子が奏のことを根気よく気にかけてきたからこそ繰り出される三段構えが、比較的計算や理屈を重んじる傾向にある奏によく効くわけですね。久美子の部長としての才能(窓開け◎)が示唆されるエピソードでもあります。

また「北宇治なの」に垣間見えるように、奏と同じくオーディションに端を発する人間関係のいざこざというトラウマを抱えていた久美子は、実力主義で切磋琢磨することを重んじる現環境を好ましく思っており、北宇治の吹奏楽部に対する強い帰属意識を持っています。これはキービジュアルにもあるように3年生編の重要なファクターの一つになっていきます。

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そういう帰属意識を持てる組織に居られるというのは幸福なことではありますが、単にその良い面を描いて終わらないのが原作者・武田綾乃先生の底意地の悪さであり作品の大きな魅力ですね。

 

・卒業式の朝にみぞれが優子にお礼を述べるやつ

アンサンブルコンテストなどを収録した短編集「ホントの話」の最終章「飛び立つ君の背を見上げる(D.C.)」における一節。この前後の中川夏紀向けのラブレターが強烈過ぎるので読者の間でも印象が薄れてしまっているのかもしれませんが、個人的にはこちらの方が、というかシリーズ通しても1、2位を争うほど好きなシーンです。

吉川優子という人物は行動力やカリスマ性、そして義侠心を備えた非常に魅力的なキャラクターではあるのですが、一方で

・強豪だった中学の吹部から一転して、高校はゆるふわ部活だったので軋轢に巻き込まれて中学からの同期が次々やめてしまった。

・その時中瀬古香織に助けてもらった恩を感じて信仰し過ぎるあまり、今度は自分が部内を分裂させる原因になってしまった。

・当の香織先輩は田中あすかにお熱であんまり構ってもらえてない。

・鎧塚みぞれの世話を甲斐甲斐しく焼いているのに、みぞれも希美にお熱で振り向いてもらえない。

・強豪校に向けて発展途上の部活を預かった結果、未来に向けた土台造りは見事にこなしたが、その年のコンクール自体は全国大会出場すら出来ずに終わった。

と、列挙してみると夏紀の存在以外はまあなんとも不憫な役回りでした。優子の最大の特徴は見返りを求めず人の為に動く所だと思うんですが、それにしてもひどい。かわいそうでかわいい。

そんな優子が卒業式に向けて最後の登校中、みぞれが駆け寄ってきます。この2人の関係はなかよし川・のぞみぞの陰に隠れてなんとも絶妙で、優子がみぞれのことをオカンのようと揶揄されるレベルで助けてきたのですが、みぞれの関心は希美にばかり向いているという状態がずっと続いていました。これに関しては優子も、そして読んでいる読者もそういうものだろうと半ば諦めていた所です。

とはいえ2人は中学高校の6年間同じ部活で苦楽をともにしてきました。6年も経てば色々変わります。直前の章(アンサンブルコンテスト)でみぞれは、受験の準備があることを理由に自らの意志で希美の誘いを断っています。そしてみぞれが成長した結果は、優子に対しても発揮されることになります。

「うちがみぞれを助けてるって、なんでそう思ったの」

「だって、助けてくれてた。ずっと」

「自分勝手に動いてただけやって」

「そんなことない。私、ちゃんとお礼を言おうと思ってた。だから、走った」

遂に、優子の積年の頑張りと思いが報われるシーン。最高です。優子がボロボロ泣いているんですが、読者としてもとても耐えられませんでした。読んでて良かったユーフォニアム。その後の優子の返しまで含めて、一生語り継いでいきたい場面です。是非とも映像化もして頂きたいんですが、アンサンブルコンテスト編をやってしまって、3年生編の時系列は4月から始まるようなので結構厳しそうですね。番外編としての「飛び立つ君の背を見上げる」が映像化されたらワンチャンあるかなくらいですね。吉田玲子先生、なんとかお願いします。

ちなみに「ホントの話」とほぼ同時期に「リズと青い鳥」が公開されています。リズと青い鳥において、希美以外にみぞれの世界を開く役割は剣崎梨々花が担っているわけですが、恐らく映画の内容も存じていたであろう原作者からこの内容が出るというのは、「みぞれが外の世界に飛び立つきっかけを作ったのは誰か」という事に関して異論をぶつけたかったのではないかという憶測をしたりしています。妄想の域を出ませんけどね。

 

と言うわけで他にも数えきれないほど良いシーンがあるのですが、今回はここまでにしておきます。アニメ3期、本当に楽しみです。

 

北宇治ファイト!